そのとき娘は
バレエのレッスン編
太郎が熱性痙攣をおこした翌日、娘はバレエの発表会にむけた強化レッスン中だった。すごく悩んだのだが、薬を飲むと熱は下がり機嫌もよくなるし、どうせ抱っこしてればいいからと連れて行くことにした。何より5歳児の知能で1回でも振りが遅れると大変なことになる。なるべく負担が少ないように車でレッスンに向かった。いつもなら間に合う時間にちゃんとでたのだが、その日教室のそばの駐車場が激混み。国際会議場と市民プラザが近いのだが、どちらかでイベントでもあるらしい。時間はかなりぎりぎりだった。娘に、
「ここでおろすから1人でエレベーターに乗っていけない?」
と聞くと娘は首をふった。娘と同じ歳でママが車を駐車場に止めている間にちゃんと1人で来てる子もいる。
ええい、臆病ものめ
とも思ったが、街中のビルのエレベーターで1人で6階まで行かせるのはやっぱり危ないかもと後で思った。新聞の文化教室なので、新聞社の支社のビルに入っていて子供に対するセキュリティーはいまいちかもしれない。慌てて少し離れた駐車場に。駐車場に入れた時点でレッスンは始まっており、会場についたのは10分過ぎていた。当然レッスンは始まっていた。発熱した太郎を抱っこしていたので、更衣室には娘1人で行かせた。どうせすでにレオタードはきているので上をぬぐだけだ。1度更衣室に入った娘は
「トイレ。」
といって出てきた。やはり太郎を抱えて面倒だった私は、娘に1人でトイレに行かせた。どうもそれがいけなかったらしい。レオタードになってからトイレにいけばよいものを、服のままいってまた戻ってきた。
「レオタードになってから行きなさい。」
というと娘は泣きそうになりながら更衣室に戻りトイレにいって戻ってきた。戻ってきた娘は泣き出してしまった。
エレベーターに乗れなかった時点でかなりムッとしていた私。もしそばにほかの子やそのお母さんや先生がいなかったら私は切れていたと思う。更衣室に入り、なぐさめ機嫌をとり、他の子が普段してるように挨拶して入るように言ったが娘は泣き止まない。
なんでだよ~、熱をだした弟に無理させて連れてきてるのにそれはないだろう
と思った。本当は
「そんなにメソメソするなら今日はやめて帰る!」
とどなりたいところだったが、私以外は母性があふれんばかりの専業主婦のママさんたちの手前さすがにそれはできなかった。途中先生も様子を見にきてくれたが娘はレッスンに加わらなかった。去年一緒だった勝ち組のママなら優しくなぐさめて説得するんだろうな~と思いつつ、怒りをこらえ優しく娘にレッスンに入るか帰るか聞いた。娘が帰るといえば、それはそれで頭にくるんだろうなと思いつつ。結局娘は
「帰らない。」
と意思表示をしたが、
「じゃあママが連れて行ってあげるから。」
とタイミングをみて先生にお願いしたが、娘はやっぱりレッスンに加わらなかった。
困っていると、先生が
「お姉さんと一緒に見てる?」
と誘ってくれた。
発表会準備のせいか今年主役を踊るらしいお姉さんがレッスンのお手伝いをしていた。娘はやっと納得してお姉さんのそばにいった。その後、センターになりようやく娘はレッスンに加わり、発表会の振り付けが始まる頃にはハイテンションだった。あくまでハイテンションなので、レッスンをまじめに受けているという意味ではなく、いつもどおり集中力が切れるとふらふらしたりするのである。あんまりカリカリするのはいけないと思いつつ、かな~りキレ気味だった。しかし、完全ママブラックになりかけると理性を取り戻し、「優しく」
を心がけるのであった。内心、
「いつか仕返しするからな~。」
(もちろん高校生くらいになってから)
と大人気ないことを思いつつ。
太郎入院編
太郎が入院してしまうと妙にハイテンションになった娘。朝は5歳児1人だけならこんなにラクなんだと実感。太郎が入院してしまい、翌週に控えていた帰省がなくなってしまった。
それを聞いた娘は、
「パパと(娘の名前)ちゃんで行ってきてもいいよ。」
とのたまう。ほ~そこまで言うならと思い、
「じゃあチバ(私の実家)ばあちゃんちに(娘の名前)ちゃん1人だけで泊まれる?」
と聞くと、
「大丈夫だよ。」
という。そうかい、じゃあ今度本社出張のとき利用させてもらおうじゃないのと思う。
金曜日、病院から帰るとアパートの同じ階段の男の子3人いるおうちの家族と女の子のいるおうちの家族が花火をやっていた。親切にも男の子のおうちのママが一緒にやろうと呼び止めてくれた。娘は大喜び。せっかくなので娘が保育園の夏祭りでもらってきた花火を家からとってきて混ぜてもらった。太郎が体調をくずし、大好きなパパがいなくてかまって貰えず寂しい思いをしていた娘にとっては思いがけず楽しい出来事だったに違いない。
気さくなご近所さんに感謝した。花火も終わり家に帰ると
「太郎がいないとママラクでいいね。」
と暴言をはく。
悪気はないのだろう。彼女なりのママに対する気遣いなのはわかる。しかし、驚くまでのポジティブ思考だ。
馬鹿なのだろうか?
一応、
「太郎は病気でつらいんだからそんなこといっちゃだめだよ。」
といった。
お花かわなくっちゃ
太郎が入院して娘が思いついたこと、それは
「お花かわなくっちゃ。」
だった。もちろん、太郎にはお花の価値などわかるはずはない。そして娘もおそらく病人のためにというよりは単に普段めったに買えないかわいいフラワーアレンジメントを買えるただそれだけだと思われる。それを証拠に、娘が太郎が退院に花を家に持ってかえることを心待ちにしていた。しかし、その娘が自分のために買った花にママはたいそうなぐさめられたのだった。お見舞いに花は正しいです。何もない病室に美しく色とりどりの花たちにどれだけ癒されたことか。(病人ではなく看病する人がね)
そして太郎がいない日、娘は遠慮がちに
「おっぱいもう痛くない?」
と断乳で張った胸をさわった。やはり太郎がいることでママに対して遠慮していたのだろうなと思った。太郎がべったりと張り付き、日常必要最低限のことをするのもやっとで気持ちに余裕もなく、その上娘が甘えてくるとついつい厳しい態度をとってしまう。私が思っている以上に娘もがんばっているのだと思った。
単に自己チューなのかみんなを盛り上げようとわざと明るくふるまっているのか半信半疑だったが、どうやら娘なりに気を使い明るくふるまっていたが知恵と言葉がたらなかっただけのようだった。その証拠に、太郎が家に帰って安心したのかそれから数日体調をくずし、わがままの限りをつくしたであった。
彼女にしてみれば、楽しみにしていたおばあちゃんやいとこに会いにいけなくなったり、太郎の体調を気にして夏らしいおでかけができなかったりしてたいくつだったと思う。かわいそうなので、パパがプールに連れて行ったが結局この夏は家族でお出かけはできなかったし、8月一杯は休日ショッピングセンターにでかけるのもはばかられた。保育園に通っていることもあり、結局夏休みはないようなものだった。太郎が生まれたばかりの昨年に引き続き、娘にとってもかわいそうな夏だったなと思う。
でもね、ママもどこにも行けなくてつまらなかった。(おいおい)
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